痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について

痛風は、単に激痛がおきるだけでなく血液中の尿酸が過剰になる高尿酸血症が問題となります。ふだんから尿酸値を安定させ高ければ下げる治療が必要です。痛みは万力で締めつけられたような強烈な痛みで、大人でも2、3日は全く歩けなくなるほどの痛みです。

痛風・高尿酸血症とは?

足の親指の付け根の関節が腫れる痛風は、血液中の尿酸が結晶化することで強い炎症を引き起こします。尿酸は、体内の新陳代謝によって生じる物質で、健康な体にも普通にとけ込んでいますが、過剰になると痛風の症状を引き起こします。血液中の尿酸が多くなりすぎるのが「高尿酸血症」です。性別を問わず血清尿酸値が7.0mg/dlを越えてしまうと痛風発作を起こす可能性が高くなります。高尿酸血症には、尿酸排泄低下型、尿酸産生過剰型の2つのタイプがあります。尿酸排泄低下型は、尿酸を排泄する能力が低下しており、、尿酸産生過剰型は、体内で尿酸が体内で尿酸が過剰に生成されすぎています。、また、このふたつが混合している混合型の3タイプに分けることが出来ます。
痛風発作自体は、治療をしなくても数日~1週間ほどで治まりますが、尿酸値が高いままであれば、発作を繰り返したり、皮下結節ができたり、尿路結石や腎障害などの合併症の可能性もでてきます。
高血圧脂質異常症など、他の生活習慣病とも合併しやすく、動脈硬化を進展させたり、悪化させたりする危険性が高まります。
動脈硬化がすすすむと、心筋梗塞、脳卒中などの重大な病気の危険性も高まります。
痛風そのものも危険な症状ですが、実際にはこうした合併症の危険度が高いのです。

治療法

高尿酸血症の治療は、他の生活習慣病と同じで食習慣、生活習慣の改善が基本となります。主に、食事量を抑制する、肥満を解消する、飲酒量の抑制、適度な水分摂取、ストレスの発散、適度な運動…などです。
体内の尿酸を増やすアルコールについては、十分に注意し、まめに水分補給するようにします。
こうした生活習慣、食習慣を改善しても尿酸値が十分に下がらない場合に、薬物療法を加えます。痛風発作を起こしている人であれば、この薬物療法と生活習慣、食習慣の改善を併行して行っていきます。痛風の薬物療法は、主に3つの目的で行います。

  1. 痛風関節炎の治療…痛風発作の炎症や痛みを抑える薬です。
  2. 高尿酸血症の治療…6.0mg/dl未満を目標に尿酸値を下げる薬を用います。たまった尿酸を溶かして痛風発作、合併症などを防ぐ薬です。
  3. 尿路結石を防ぐ薬…尿が酸性になると、尿酸が溶けにくくなり尿路結石が出来やすくなるため、尿をアルカリ性に保つ薬です。
  4. 【痛風発作を抑える薬】

    コルヒチン

    痛風発作緩解薬のコルヒチン。かなり前から痛風の特効薬として知られる薬です。痛風発作を抑える、軽減するといった両効果があります。ただし、症状を抑えるのみで根本的治療にはなりません。痛風発作では、関節にたまった尿酸の結晶が剥がれ、白血球がそれおw排除しようとする結果、炎症が生じて痛みが生じます。
    コルヒチンは、白血球の作用を抑えて炎症を起こす物質が放出されないようにすることで発作を抑えます。痛風発作を起こしたことのある人は、この薬を携行し、発作の予兆があったらすぐに予防的に服用します。尿酸値を下げている途中は発作が起こりやすいのが特徴です。

    使用上の注意と副作用

    下痢などの消化器症状があらわれる場合があります。男子の場合、多量に服用すると、精子形成に影響するという報告があります。薬を増量すると副作用がでやすいので必要なときに必要なだけ使うようにする服用方法を守ります。
    シメチジン(胃潰瘍薬)、エリスロマイシン(抗菌薬)、ニフェジピン(降圧剤)などとの併用で作用が増強される場合があります。
    発作の際に1~2錠程度服用する程度あれば心配いりません。

    非ステロイド系消炎鎮痛薬

    痛風発作が起きてしまったら関節の炎暑を抑えて、痛みや腫れなどを鎮める非ステロイド消炎鎮痛薬が治療の中心となります。一般的に痛み止めとして使われる薬ですが、痛風には、インドメタシン、ナプロキセンプノプロフェンなどです。
    痛風の発作は、激しい痛みのためパルス療法といって腰痛などで用いる通常量よりも多めの量を1~2日間だけ使用します。その後も痛みが残るようであれば、通常量を服用します。
    痛みが改善されれば服用は中止します。

    使用上の注意と副作用

    副作用は、胃腸障害ですが、服用期間が短期間なため問題になることはほとんどありません。腎不全患者には使用できません。

    ステロイド薬

    痛風関節炎が同時に何カ所も起きた場合、あるいは、非ステロイド消炎鎮痛薬が使用できない場合、また、使っても効果がでない場合には、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)が処方されます。
    炎症を強力に抑制し、痛みや腫れなどを取り除きます。代表的な薬は、プレドニゾロンです。内服で用いるほか、関節への注射が行われることもあります。急にやめるとリバウンドが起こるので、内服薬の場合、1日15mgを1週間、10mgを1週間、5mgを1週間といった段階的に減量する服用法を推奨しています。

    使用上の注意と副作用

    短期間使用になるため感染症といった副腎皮質ホルモンの特徴的な副作用は心配いりません。服用中は、自己判断でやめたり量の変更を行わないようにすることが何より大切です。

    【尿酸値を下げる薬】
    尿酸値を下げる薬である「尿酸降下薬」には「尿酸排泄促進薬」と「尿酸生成抑制薬」があります。以下の表のとおりです。

    尿酸降下薬の種類と特徴

    分類
    尿酸排泄促進薬
    尿酸生成抑制薬
    商品名
    • ブコローム(パラミヂン)
    • プロベネシド(ベネシッド)
    • ベンズブロマロン(ユリノーム)
    • アロプリノール(アロシトール、ザイロリック、サロベール、リボール)
    特徴

    〔適応〕尿酸排泄低下型、アロプリノールが使えない人

    • 尿酸値の低下は速やか
    • 尿中の尿酸濃度を高める
    • 主な副作用:尿路結石、ベンズプロマロンではまれに重症の肝障害、プロベネシドでは薬剤相互作用、ブコロームで消化性潰瘍など

    〔適応〕尿酸産生過剰型、尿路結石や腎機能障害がある人、尿酸排泄促進薬が使えない人

    • 尿酸値の低下は緩やか
    • 尿中の尿酸濃度を低下させる
    • 主な副作用:時に軽い肝障害、湿疹など。腎不全のある人はまれに重篤な症状がでることも。

    タイプにより尿酸排泄低下型には尿酸排泄促進薬を用い、尿酸産生過剰型には、尿酸生成抑制薬を用いるのが基本的な処方です。
    尿酸値を下げる薬は、最少用量からスタートし、尿酸値が6.0mg/dl未満になるまで量を少しずつ増量していきます。

    尿酸排泄促進薬

    腎臓でろ過された尿酸の再吸収を抑えて尿酸の排泄量を増やす薬です。主に尿酸排泄低下型の高尿酸血症の患者さんに処方されます。現在、使われている薬は、ペンズプロマロンです。これが使えない場合には、プロベネシドやブロロームを用いることもあります。ベンズブロマロンは1日に1回服用が一般的ですが、2~3回に分けて服用する場合もあります。

    使用上の注意と副作用

    尿中に排泄される尿酸が増え、尿路結石が出来やすくなるため、水分を多めに摂取して尿量を増やし、尿中の尿酸濃度が高くなりすぎないようにコントロールします。通常、尿アルカリ化薬を併用します。また、ベンズブロマロンでは、まれですが、重い肝障害が起こることがあるたため、定期的に血液検査を行い肝機能チェックを行います。

    尿酸生成抑制薬

    肝臓での尿酸合成にかかわる酵素の働きを阻害して尿酸がつくれるのを妨げる薬で主に尿酸産生過剰型の高尿酸血症の人に用いられます。現在、一般的に使用されているのは、アロプリノールです。1日1回朝1錠が基本ですが、作用時間が短く1日2回、朝晩に分けて飲む処方も多くなっています。

    使用上の注意と副作用

    腎不全のある人が多量に用いると、薬の成分の血中濃度が増え中毒症状がでてしまう場合があります。中毒症状では、過敏性血管炎、再生不良貧血に注意します。少量から使い始め、血液検査を定期的に行います。
    併用で注意するのは、アザチオプリンやメルカプトプリン(気管支炎拡張薬)、ワーファリン(抗凝固薬)などです。
    薬の相互作用による問題はほとんどありませんが、希に肝障害が起きる場合があります。
    尿酸を溶けやすくする薬
    痛風の人は尿路結石が出来やすく、その予防に処方される薬です。

    尿アルカリ化薬

    尿をアルカリ性に傾けて尿酸を溶けやすくし、結晶化を抑制する薬です。従来は炭酸水素ナトリウムが使われていましたが、現在は、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウムが処方されます。
    1日に2~3回食後に飲みます。尿路結石は尿が酸性に傾くほどできやすくなるため、尿をアルカリ性に保つのが重要です。尿酸値を下げる効果はないので、生活習慣、食習慣には注意しながら生活します。
    尿酸排泄促進薬を服用して、尿中の尿酸が増加すると同時に尿路結石のリスクも高まるため、尿アルカリ化薬を併用します。

    副作用・使用上の注意

    危険な副作用はほとんどなく安心して服用できますが、ナトリウムが含まれているために高血圧や心臓病がある人は注意が必要です。現在用いられている配合剤はナトリウムの含有量が炭酸水素ナトリウムのおよそ半分です。カリウムのt高い人には使えません。

コメント

  1. […] 因となります。痛風は、高血圧や糖尿病、高脂血症を合併しやすく、また、慢性化すると尿路結石や腎不全になることもあります。 痛風の治療に使われる薬については詳しくはこちら。 […]

  2. […] れでもうまくいかない場合は、体内で尿酸が合成されにくくなる薬や、体内の尿酸が排泄されやすくなる薬を使えばよいのです。痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬についてはこちら。 […]

  3. […] 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について […]

  4. […] 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について […]

  5. […] だからです。ただし、すでに痛風発作を起こした経験のある人は、尿酸値が7.0mg/dl以下であっても治療を続ける必要があります。 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬についてはこちら。 […]

  6. […] を超える状態が続く場合は、痛風発作を起こす危険性が極めて高くなりますから、医師の判断で薬物療法を開始する可能性が高まります。 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について […]

  7. […] 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について […]

  8. […] う常識はひっくり返すことが可能です。本当の意味で薬が必要なくなるまで、自己判断による中止は絶対に避けるようにしたいものです。 痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について […]